東京高等裁判所 昭和52年(行ケ)129号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【説明】
「(四) 審決を取り消すべき事由
審決理由中各引用例の記載内容は争わないが、審決は、本願明細書の特許請求の範囲記載のとおり物の製造方法の発明であるのに、これを物の発明であるとして発明の要旨を誤認したうえ引用例と対比し、本願発明には新規性がないとの誤つた判断をしているから、取り消さるべきである。」
【判旨】
二そこで、審決取消事由の有無について検討する。
明細書によれば、本願明細書の特許請求の範囲には、「磁性材を充てん基材とする合成ゴム、合成樹脂の製造法」と記載があるのみで、磁性材を合成ゴムまたは合成樹脂に配合する時期、方法、条件等については何らの記載もないこと、また発明の詳細な説明の項にも、磁性材が例示され、磁化処理は一般公知の方式によるべくその時期は目的、材料、製品の性能に対応して選ばれる旨記載され、実施例として「定法による高分子材料の製造工程中に、補強用てん基材としての磁性材を取り入れるため所要の工程を加えられるものである」と記されているに過ぎず、その工程の具体的内容、構成の説明を欠き、他に製造法らしい記載はないこと、しかも効用として記されていることはすべて製造された物に関するもののみであり、製造法自体の効用につては何らの記載もないことが認められる。
明細書の記載は、出願人の主観的意図によつてではなく、表示されたところを全体的に観察することによつて、客観的に解釈されるべきであるから、前認定のところからみて、本願特許請求の範囲における前記のような文言にもかかわらず、本願発明の要旨を「磁性材を充てん基材とする合性ゴムまたは合成樹脂」にあるとした審決の認定には十分な根拠があり、これを正当として是認できる。
そして、このように本願発明の要旨においては、磁性材の種類、量、使用される合成ゴムまたは合成樹脂の種類、組成物の形状及び用途について何らの限度も付されていないから、合成ゴムまたは合成樹脂に磁性材を配合した組成物はひろく本願発明の要旨に含まれると解するほかない。
(小堀勇 小笠原昭夫 石井彦壽)